概 要
痰が熱とともに心神を上擾する病態。
肝鬱化火の症状に水分代謝の異常が生じたタイプ。
【実証】
飲食の不摂生・飲酒癖などで脾気が滞って痰湿が生じ、痰湿が胆気を鬱滞させて胆火を引き起こし、そのために痰湿が化熱して痰熱を生じたり、熱病の邪熱によって津液が濃縮されて痰熱に変化し、痰熱が上行して心神を乱すために不眠が生じる病態です。
【主な症状】
・いらいらして寝つきが悪い
・夜中に驚いて目を覚ます
・夢をよくみるなどとともに
・口が苦い
・吐き気
・嘔吐
・痰が多い
・胸苦しい
・黄膩苔
・脈がやや速く力がある
治 療
清化熱痰…熱を冷まして痰(湿)を除去します。
体の熱を冷まして痰をとりのぞく作用のある漢方薬を選びましょう。温胆湯、竹癎温胆湯が適しています。
食事のバランスを見直して、特に夕食は腹八分目を心がけて、快適な眠りを手に入れましょう。
使用漢方薬
次の漢方薬が、不眠症に対してよく効く可能性が高いです。
処方名:温胆湯
処方名:竹筎温胆湯
処方名:柴胡加竜骨牡蛎湯
食 養
体の熱を冷まし、水分の代謝をよくする食材を選びましょう。消化を助けて痰をとりのぞく作用のあるだいこんがおすすめです。また、とうがんぐわい、こんぶ、のりなども有効です。
不眠を解消するには、日頃の食生活もポイントとなります。
春菊やセロリ、セリなどの苦みがある香り野菜は、興奮を抑えて精神を安定させる働きがあります。
青じそを3枚ほどカップに入れてお湯を注ぎ、香りが出たら飲む「青じそ茶」やミントティも効果的です。
また、ミカンやオレンジなどの柑橘類もストレスを和らげ、リフレッシュさせる効果があります。
ミルクやヨーグルトなどの乳製品も鎮静効果があるので、眠れない夜はホットミルクでカルシウムの補給をしましよう。
ツ ボ
脾胃の機能を高める効果のある中院(ちゅうかん)を刺激して、痰をとりのぞきます。また、豊隆(ほうりゅう)も同様の効果があります。眠る前に刺激しましょう。
●不眠に効くツボと足浴
「頭寒足熱」の言葉どおり、足を温めると眠りに入りやすくなります。
寝る前に足浴や不眠に効くツボを押して、リラックスしましよう。足の裏には、ツボが集中しているので、下記の「失眠」を中心に、全体をもみほぐすようにします。
失眠(しつみん)
足の裏のかかとの中央にあるツボ。神経を休めて内分泌の働きを整える効果があります。
養 生
不眠症は、精神心理的素因や生活環境と関係の深い疾患です。その治療は完全に薬に頼っては難しい場合もあります。したがって精神面のコントロールや生活環境改善のための養生が大切です。
1.ストレスや暴怒など激しい感情変化を避ける。気功や呼吸の調節法は、精神活動の安定に有効です。
2.就寝前に煙、酒、濃い茶、濃いコーヒーなどの飲み物は禁止します。
3.食事、特に夜食は控え目に、また辛い食物など興奮性の飲食物は避けます。
4.適度の運動(例えば、散歩、太極拳、気功など)は睡眠によいですが、寝る前の激しい運動はよくないです。
5.寝室の室温や明るさなどの調節も重要です。