耳鳴り（ 脾胃虚弱（脾気虚）- ）

耳鳴と難聴は聴覚に異常が起きる病証です。耳鳴とは、外界に音がないのにある種の音が聞こえるように感じるものをいいます。

臨床的には、単側耳に起きる場合もあるし、両側耳共に発症する場合もあります。中医弁証学の古典には、"脳鳴"'、"苦鳴"、"輝鳴"、"耳数鳴"、"耳虚鳴"、"暴鳴"等の病名記載があります。

難聴とは、聴力の減退のことをいい、ひどい場合は外界の音が聞こえなくなり、「耳聾」、「重聴」とも称されています。

耳鳴と難聴とは密接な関係にあります。耳鳴は難聴の前兆症状であり、難聴の軽症で、難聴は耳鳴の重症とも考えられます。両者の病因病機、治療方針および処方は、ほぼ同じであります。

現代医学の伝音難聴、感音難聴、神経性耳鳴・難聴、突発性難聴、メニエール病、中耳炎などによるものは、本病証の弁証論治を参考に治療すると良いです。

概　要

脾は気血を生み出すと同時に、清気を上昇させる機能があります。

脾気の運化機能が正常であれば、体内の気血が全身に充足していますが、減退すると気血の生成不足だけではなく、清気が上昇できない状態となり、耳鳴・耳聾が生じます。

「脾胃(胃腸)」は飲食物を消化吸収し、その栄養を全身に届けています。

そのため、脾胃の働きが低下して栄養を十分に摂ることができないと、耳の栄養も不足気味になります。その結果、耳鳴りや難聴などの症状が起こりやすくなります。

日頃から疲れを感じやすい人に多い体質ですが、過度な疲労が重なると、さらに脾胃の機能を低下させてしまうので気をつけてください。とりあえずは弱った脾胃を元気になるよう心がけ、朝昼晩の食事をしっかり取って体力を養ってください。

主症状

疲れると耳鳴りや難聴が強くなる、めまい

身体の信号

疲労感、倦怠感、顔色につやがない、食欲不振、軟便、舌の色が淡い

治　療

●耳鳴・難聴…脾胃虚弱のため、気血が上部へ行かず、耳竅が栄養され難いからである。

●疲労による誘発・増悪…過労は気血を更に消耗するからである。

●起立時に激しくなる…気血不足のため、起立時にはすぐに気血が上部へ届かず、ために耳竅の気血不足が一層助長されるからである。

●易疲労、顔面・唇の血色不良…気血不足により起こる症状である。

●食欲不振、食後の腹部脹満感、軟便傾向あるいは下痢…脾胃虚弱のため、運化や受納機能が低下するからである。

●舌質淡、脈虚弱…脾胃虚弱、気血不足を意味する。

治療原則

健脾益気・養血通竅

治則説明

脾胃を強め、気血の生成と清陽の升提を改善し、耳竅を養います。

使用漢方薬

次の漢方薬が、耳鳴り・脾胃虚弱（脾気虚）・に対してよく効く可能性が高いです。

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処方名：八珍湯（四君子湯＋四物湯）

処方名：十全大補湯

処方名：補中益気湯

処方名：玉屏風散

処方名：参苓白朮散

処方名：六君子湯

舌　質

淡

舌　苔

白苔

脈　診

虚弱

食　養

耳鳴り-脾胃虚弱（脾気虚）-対応の方は、次の食材を積極的にお召し上がりください。

胃腸の元気を養う
●豚ヒレ肉
●鶏肉
●白身魚
●大豆製品
●そら豆
●いんげん豆

備　考

胃腸の疲れに注意しましょう

慢性的な疲労や病後などで体力が落ちているときは、脾胃の働きも弱くなります。栄養分や陽気を体中に運ぶ脾胃の機能が低下すると、耳の栄養状態も悪くなり、さまざまなトラブルが現れるのです。

このタイプは、疲労時に耳鳴りや聴力の減退が強くなり、立ち眩み、倦怠感、食欲不振、軟便などの症状を伴うことが特徴。まずは脾胃の機能を健やかにして、しっかり栄養を摂ることを心がけましよう。