概 要
元気な夏を過ごす暑さ対策。
厳しい暑さが続く夏は、一年を通じて最も体力を消耗しやずい時期です。この季節を元気に過ごすためには、なにより日頃の健康管理が大切です。ここでは、夏の体調不良を4つのタイプに分けて、養生法を紹介しましょう。
暑邪で気を消耗します。
夏の極端な暑さは、暑邪となって体内に入り込み、気を消耗させます。とくに日本の夏は高温多湿で、湿邪も消化吸収にかかわる脾胃の機能を低下させて、気の不足を招きます。
夏バテは次の2つのタイプに大別できます。
1つめは、梅雨どきから体調が悪くなるタイプ。もともと胃腸が弱い人に多く、湿邪が脾胃にとりつくために、津液を排出する機能が低下し、不必要な水分が体内にたまります。体調が悪く夏中ゴロゴロしてすごします。食欲が低下して夏やせするのも、このタイプです。
もう一つは、夏の間は元気に活動していて、秋口にガクッと体調をくずすタイプです。夏の暑さにより、気と陰液を消耗するのが原因です。陰液とは、体の熱を冷ます体液のことです。そのため、体内の熱をさばききれず、体調をくずしてしまうのです。自分がどちらのタイプになりやすいかを自覚して防御策をとり、暑い夏もイキイキと元気にすごしましょう。
暑さからくる夏特有の体調不良は「暑邪」が原因です。暑邪は自然界から入ってくる邪気「六淫」の一つで、この邪気に身体が侵されるのは高温多湿の夏だけです。
陽邪であり、「炎熱」の性質を持つ暑邪が身体に入ると、熱で頭が働かずボーつとしたり、皮膚の弱い人は赤みが強く出て悪化したり、ひどく汗をかいたり、といった影響が現れます。中でも、汗のかき過ぎには要注意です。中医学では、汗を身体をみずみずしく保つ津液(水)の一つと考えています。汗をかき過ぎると、津液とともに「気(エネルギー)」も消耗してしまうため、倦怠感や息切れといった体調不良につながるのです。
また、身体の水分が失われると血液が濃縮し、「心」にも大きな負担がかかります。汗のかき過ぎによる動悸やめまいは、心へのダメージです。症状が重くなると心不全など重大な病気を引き起こすこともあるので、十分注意してください。
もう一つ、夏に気を付けたいのは「脾胃」の不調。高温多湿の日本の夏は、暑邪とともに「湿邪」が侵入することも多くなります。
そのため、湿気に弱い脾胃の機能が弱くなり、食欲不振や下痢、夏痩せといった症状が現れるのです。
このように、夏の暑さ対策は「心」と「脾胃」がポイントとなります。夏の疲れや体調不良を秋に残さないよう、日頃の食事や過ごし方に気を配り、しっかりと予防、対応しておきましょう。
治 療
もともと脾や胃が弱く、湿の邪が入り込み、消化吸収の邪魔をして、体調をくずします。
あなたの症状にあった証を次の4つの中から選択・クリックして下さい。
●梅雨から食欲が低下→夏バテ・食欲低下(湿困脾胃) »
夏の暑い時期にがんばりすぎて、暑さによる気の消耗が激しく倒れてしまいます。
●秋に疲れが出る→夏バテ・体調不良(気陰両虚) »
夏や梅雨など湿気の多い時期によく起きるのが、湿邪が原因の風邪です。
●下痢や吐き気がある(暑湿)→夏バテ・夏風邪(暑湿(夏の風邪)) »
暑熱タイプの体調不良は、炎天下など暑さの強い場所に長くいることが原因です。
●熱の影響が強い(暑熱)→夏バテ・炎天下(暑熱) »
使用漢方薬
次の漢方薬が、夏バテに対してよく効く可能性が高いです。
処方名:六君子湯
処方名:胃苓湯
処方名:清暑益気湯
処方名:生脈散
処方名:清暑益気湯
処方名:藿香正気散
処方名:黄連解毒湯
処方名:板藍根
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食 養
毎日の食養生で、夏の不調を癒しましょう。
夏バテを解消するには、まず身体を整えることが基本です。中医学の知恵を活かした養生法で夏の不調を取り除きましょう。
夏バテを回復する食材は、次のとおりです。
●甘味
甘味のある食材は、長夏の食養生の主役。弱くなった脾胃を補い、健やかに保ちます。
山芋、じゃがいも、かぼちゃ、きのこ類、湯葉や豆腐、卵、太刀魚、ごま、くこの実、なつめ、ぶどう、栗。
●酸味
酸味には「収れん」作用があり、汗や下痢などを抑えます。
梅干、あんず、ざくろ、酢、梅酒、あんず酒。
●温性
身体を温める効果のある食材で、冷えを解消します。
良質の鶏肉、豚肉(モモ肉など赤身のある部位)、鮭、にんじん、ねぎ、にんにく、もち米、シナモン。
備 考
冷房に頼り過ぎず、自然な暮らしを。
昼夜を問わず暑さが続く真夏は、エアコンの冷たい風につい頼りがちです。でも、涼しさを求め過ぎると冷気で身体の陽気が奪われ、体調を崩してしまうこともあります。
家での冷房は、汗が引くまで使う、こまめに温度調節をする、風が直接当たらないようにするなど、バランスを考えて上手に使うことがポイントです。
太陽が早く顔を出すこの時期は、早起きをして朝の新鮮な空気をたっぷり吸いこむのも良いですね。朝は気温も低いので、身体を動かすのもおすすめです。ただし、睡眠不足には要注意。体力が不足しがちな夏は、睡眠で疲労を回復することが大切です。寝不足かなと感じたら、昼寝や早めの就寝で睡眠を補うようにしてください。