梅雨から夏にかけての蒸し暑いこの季節は、特に胃腸の不調を感じやすい時期です。

夏バテなどで体調を壊さないためにも、この事態から胃腸を健やかに整えて元気に夏を過ごしましょうね!。


概 要

暑邪

「湿」と「冷え」が胃腸の不調を引き起こす

中医弁証学では、自然界には季節特有の邪気があり、この邪気の侵入が病気の原因のひとつであると考えます。

邪気には「風・寒・暑・湿・燥・火」の6種類がありますが、夏は暑邪が体内に侵入しやすくなる季節です。

暑邪は燃えるように熱いという性質を持ち、同時に湿邪を伴うことが特徴です。

梅雨から夏に感じることの多い胃腸の不調は、主に湿邪が原因となっています。五臓でいう脾(消化吸収をコントロールする臓器)には"湿を嫌い、燥を好む"という性質があります。水分の摂り過ぎや、湿邪の侵入により、体内に湿(余分な水分)が溜まると胃腸の働きが低下し、食欲不振や下痢、吐き気、胃もたれなどの症状が現れます。

また、冷たいものの摂り過ぎは、胃を冷やすため脾の機能を低下させるので、水分代謝が滞り体内に湿が溜まる原因に。たくさん汗をかく夏はしっかり水分補給をすることが大切ですが、冷たい飲み物はなるべく控え、胃腸に負担をかけないξ?心がけましょう。

胃腸は、食べ物を消化吸収して栄養を全身へ行きわたらせるという、健康を保つ上でとても重要な役割を担っています。五行学説では"脾は肺を育てる"関係にあたるため、夏に胃腸を養生することで、秋に現れやすい不調(皮膚や髪の乾燥、空咳など)を予防することにもつながります。(五行相関図参照)

暑さを元気に乗り切り、秋を健やかに過ごすためにも、本格的な夏を迎える今からしっかり胃腸の養生をしておきましょう。


湿邪

治 療

暑さや湿気、冷房による冷えなど、夏は繊細な胃腸に負担がかかりやすい時期です。暑さに負けない体力をつけるためにも、胃腸をいたわる生活習慣を心がけましょう。


治療原則

胃腸(脾胃)症状別対処法


治則説明

食欲不振

食欲不振

主な原因

●脾の運化機能(飲食物から栄養を吸収して全身に送る)の低下:脾気虚

付随症状

●疲労倦怠感

舌 診

●色が淡い(淡白舌)

淡白舌

方 剤

関連処方四君子湯 »
関連処方六君子湯 »

養 生

●脾を養う

食養生

●粳米、豆腐、湯葉、山芋、いんげん豆、サンザシ

粳米 豆腐 湯葉 山芋 いんげん豆 サンザシ

区切り線

食が細い

食が細い

主な原因

●胃の受納機能(飲食物を受け入れ、初期の消化を行う)の低下:胃気虚

付随症状

●痩せ、便秘気味

舌 診

●舌苔が少ない

舌苔が少ない

方 剤

関連処方小半夏加茯苓湯 »
関連処方六君子湯 »

養 生

●胃を養う

食養生

●トマト、豆乳、キャベツ、ヨーグルト

トマト 豆乳 キャベツ ヨーグルト

区切り線

拒 食

拒食

主な原因

●ストレス:肝脾不和

付随症状

●憂うつ、げっぷが多い

舌 診

●舌辺が紅い

舌辺が紅い

方 剤

関連処方柴朴湯 »

養 生

●肝気の流れ、胃の働きを整える

食養生

●玫瑰花(まいかいか)、菊花、香草類(芳香のある草・ハーブ・香辛料)

玫瑰花(まいかいか) 菊花

区切り線

過 食

過食

主な原因

●胃の熱

付随症状

●□が渇く、顔が赤い:胃熱

舌 診

●舌色が紅く、舌苔が黄色

舌色が紅く、舌苔が黄色

方 剤

関連処方白虎化人参湯 »
関連処方竹葉石膏湯 »
関連処方三黄瀉心湯 »
関連処方黄連解毒湯 »
関連処方防風通聖散 »

養 生

●胃の熱を冷ます

食養生

●緑豆、大根、とうもろこし

緑豆 大根 とうもろこし

区切り線

胃もたれ

胃もたれ

主な原因

●湿の停滞

付随症状

●胃の膨満感、体重の増加

舌 診

●舌苔が多く粘りがある:黄膩苔

舌苔が多く粘りがある

方 剤

関連処方藿香正気散 »
関連処方香蘇散 »
関連処方胃苓湯 »

養 生

●湿を取って胃の働きを整える

食養生

●チンピ、しそ、りんご、きゅうり、サンザシ、カルダモン

陳皮 紫蘇 りんご きゅうり 山査子 カルダモン

区切り線

胃のむかつき

胃のむかつき

主な原因

●胃の降濁機能(消化した飲食物を小腸へ送る)の低下

付随症状

●食後の胸焼け

舌 診

●舌苔が黄色く多い

舌苔が黄色く多い

方 剤

関連処方茵蔯五苓散 »
関連処方猪苓湯 »
関連処方葛根黄連黄芩湯 »

養 生

●胃の熱と湿を取り除く

食養生

●はと麦、粟、押し麦、グレープフルーツ、ミント

はと麦 栗 押し麦 グレープフルーツ ミント

区切り線

胃 痛

胃痛

主な原因

●胃の冷え

付随症状

●冷えると痛みが強い

舌 診

●舌色が淡く舌苔が白い

色が淡く苔が白い

方 剤

関連処方安中散 »
関連処方人参湯 »
関連処方呉茱萸湯 »

養 生

●胃を温める

食養生

●山椒の実、ねぎ、しようが、らっきょう

山椒の実 ねぎ しようが らっきょう



備 考

脾胃に元気をもたらす薬膳茶

 「湿」対策には ●紅茶+生姜+チンピ
●はと麦+生姜
●コーン茶(韓国で一般的)
●とうもろこしの髭茶
●干しぶどう+生姜(むくみに)
 「冷え」対策には
●しその葉+生姜+黒糖
●紅茶+シナモン+黒糖
●紅茶+マイカイ花+蜂蜜
 「胃腸のもたれ」には
●はと麦+なつめ
●玄米茶+チンピ
●玄米茶+なつめ
 「食欲不振」には
●プーアル茶+チンピ
●サンザシ十チンピ
●チンピ十生姜十なつめ
 
 「慢性疲労」には
●はと麦+なつめ(+蜂蜜)
●はすの実+なつめ+蜂蜜
●高麗人参+なつめ+蜂蜜


夏を乗り切る暮らしの養生

1.胃腸を冷やさないよう、夏でも温かい料理や飲み物をいただきましょう。お茶は麦茶よりも「ジャスミンティー」や「緑茶」がおすすめですよ!。

2.サラダや冷奴などの冷たい料理には、「みょうが・しそ・生姜」など冷えをやわらげる薬味でひと工夫しましょう。

3.食材が傷みやすい梅雨から夏は、冷蔵庫を過信せず、なるべくこまめに買い物をしましょうね!。食中毒の対策としても有効です。

4.一日の終わりは湯船につかってのんびりしましょうね。冷房で冷えた身体が温まり、血行促進にも効果的です。

5.朝は胃腸を整える「藿香正気散」、夜は陰陽バランスを整える「生脈散」を。中国では一般的な、夏の健康習慣です。


暑邪と湿邪 湯船につかってのんびり