厚薄の事例
「薄苔は表証を主どる。厚苔は裏証を主どる。」苔の厚さと厚さの変化から、病変部位の深さ、病邪の軽重、病症の進退を推量することができます。
薄苔(ハクタイ)
苔が薄くて苔を透かして舌体の色が見えるものです。「見底」ともいいます。
【弁証論治】(syndrome differentiation and therapy determination)
表証
内傷軽症
健康な方
薄苔は胃気正常の印であるため健康なものにみられます。また、表証・内傷軽証に胃気の異常がない場合にもみられます。
厚苔(コウタイ)
苔が厚くて舌体の色がまったく見えないもの。「不見底」といいます。
【弁証論治】(syndrome differentiation and therapy determination)
①裏証
邪気は裏に入ると苔は厚くなります。
②痰飲・水湿・食積
厚臓苔・厚腐苔として現れます。病邪・湿潤などが胃気を挾んで舌へ持ち上げるためです。
苔の厚薄の変化により、病位の深さ・病邪の軽重・病状の進退を推測することができます。
薄苔から厚苔への変化は、表証から裏証へ・軽症から重症へ・病状が増悪して邪気が進む兆候です。
逆に、厚苔から薄苔への変化は、重症から軽症へ・病状が好転して邪気が退く兆候です。
薄苔よりさらに薄く、苔があるかどうかわからないほどの透明な苔は「透明苔」と呼びます。
薄苔から透明苔への変化は脾胃気虚*1 ですが、無苔から透明苔への変化は胃気が回復しつつあり、苔が生え変わる兆候を示します。
脾胃気虚の治法は、補気(益気)です。
♥四君子湯
♥参苓白朮散
♥補中益気湯
*1 脾胃気虚:脾胃の「運化を主る」機能の低下です。食欲不振、味がない、消化が悪いなどの消化器系の症候。