西洋人の身体観は西洋医学に基づいていますよね。西洋人にとって中国伝統医学の身体観は想像を絶するものです。西欧化された現在の日本人の身体観も、すでに江戸時代の身体観を失い、西洋人の身体観とほぼ同様なものになっていますよね!。

このWebでは、中国伝統医学の全般的な情報源です。生理学や病理学を含む身体観、生薬と漢方薬を含んだ処方、指圧、薬膳、気功・太極拳などの説明をしています。

 中医学(中国伝統医学)原理

中医学の良さは、「観察」で得られた情報だけを採用し、西洋医学に見られるような「解釈(自然科学による原理解明)」を加えないところにありますよ!。

なぜならば、他の自然科学の学問対象とは違って、人間の身体のメカニズムは不明・複雑なところが多く、「解釈」が入ると、「知らないものを知っていることにする」というゆがみやひずみが出るものです。

どうして「解釈」をともなわない「観察」だけの中医学が、ただの民間療法にとどまらず、学問として体系化されたかといえば、それはひとえに「分類原理」の導入によるということですね!。

病候論
 東洋・西洋  分類  八綱分類    
 中医学  病位  表裏  上下  三焦
 内外  四要
 病性  熱寒    六淫
 病勢  実虚    四傷
 病期      四期
 西洋医学  病因      
 病名      



 弁証概要

病気がどういう種類かということを「病証」または単に「証」と呼びます。

その証を見きわめることを「弁証」、弁証の結果から治療方法を決めることを「論治(ろんじ)」と呼び、両方をくっつけて「弁証論治」という言葉を使います。

1.八綱弁証

虚か実か、寒か熱といった症状の性質から判定していきます。

中国人にとって病は、微生物の侵入や、組織の病や損傷、ストレスに起因する問題ではありません。

証というものに対して、いろいろの分類法がありますが、一番基本的には、表裏、熱寒、実虚という分類ですね。
表・裏というのは、病位(病気の位置)についての分類であり、熱・寒というのは病性(病気の性質)についての分類、実虚というのは、病勢(病の勢)についての分類ですよ!。病は以下の簡単な4つの要素をはらんだ問題です。

八綱分類 ①内因あるいは外因を発端とする。
②身体の生命エネルギーと侵入した邪の基本的な衝突。
③陰陽のアンバランス。
④気の循環における問題。
これらの要因は、中国医学に基づくすべての証(病症)の基盤です。また証は以下に示す八綱という8つの原則に基づいて総括されます。

虚実
寒熱
陰陽
表裏
中国医学において診断とは、単に上記の可能性を論理的に検討し、根本的な原因を特定することにあります。

八綱弁証 »

1.表裏弁証

表裏は漢方医学における病位についての分類であって、まず定義から考えると、表裏は上下と内外という2つの概念から成り立っている。つまり、病

2.病邪弁証

主に外感(体の外から入る病邪)が原因になって起こる症状に対して、病因が何かという観点から判定します。

病邪弁証は、「審証求因」の内容の1つです。証候には、すべて一定の原因がありますよ!。

したがって証候を弁証していくことにより、その病因をつきとめることができますね。

病因の範囲は非常に広く、六淫・七情・飲食・労逸・虫毒および内生諸邪などにとどまらず、さらに体質・人間関係などの因子とも関係します。

病邪は病因の1つととらえられますよ!。

病邪弁証の重要な内容である風・寒・暑・湿・燥・熱・瘀血・痰飲・水気の弁証について説明します。

3.気血津液弁証

気・血・津液の失調から見きわめて判定します。

気と血は人体を構成する基本要素であり、また人体の各生理機能の基礎となる物質でもあります。気と血の質の差、量の不足または運動障害は、すべて一連の証候を形成します。

気は陽に属しており、血と津液は陰に属しているため、気血津液の機能は陰陽の2方面に区別することができます。

したがって気血津液の儲損、またはその機能の減退により起こる病証も、陰虚と陽虚という2つの基本証候に分けることができます。

主として陰虚・陽虚・気虚・血虚・気滞・血瘀などの証候について解説します。

4.臓腑弁証

五臓六腑のどれに不具合が生じているのかを見きわめることからアプローチします。

臓腑弁証は、八綱弁証・気血弁証・病邪弁証を基礎としており、主として臓腑の生理や病理、臓腑間の相互関係にもとづいて、疾病にともない出現するさまざまな症状を分析・帰納する方法です。

臓腑弁証は、弁証体系のなかで重要な位置をしめています。また、この弁証には定性と定位が含まれています。すなわち、定性により証が虚実寒熱のどれに属するかを判断し、定位によりどの臓腑に病変があるかを判断しますよ!。

臓腑弁証は中医の伝統的な臓腑観にもとづいており、五臓を中心とし、腑は関連する臓に従属するものとしています。表裏関係にある臓と腑を関連させて解説します。

 論治原則

①体内に邪魔なものが存在すると病気を起こす。→そのときはそれを除く。

②生理活動を行うものが滞ると病気を起こす。→そのときはそれを巡らす。

③生理活動を行うものが不足すると病気を起こす。→そのときはそれを補う。


 舌 診

視覚を使って患者の様子を観察する「望診」のなかでも、もっとも重要視されるのが「舌診」ですよ!。

舌自体の色や大きさなど舌の質を診る「望舌質」と、表面についた「舌苔」の厚さや色を診る「望舌苔」に分かれ、「望舌質」からはおもに気血の盛衰を、「望舌苔」からはおもに病邪の性質や深さを知ることができます。

そして、舌の裏にある静脈の形や色も、よくチェックされますね。 舌 診 »

 脈 診

脈診では、人さし指と中指、薬指の3本を揃えて患者の両手首に当て、脈の強さやリズム、速さ、打ち方などの違いによる異常(脈象)を確かめます。

手首の側から人さし指で「寸脈」、中指で「関脈」、薬指で「尺脈」を押さえます。

それぞれの部位が特定の五臓と対応しているため、病位や病邪、気・血・津液の異常などを確認することができます。

病気のときに現れる「病脈」は28種類あり、すべてを識別するのはプロでも非常にむずかしいといわれますね!。 脈 診 »

 証判定エキスパート・システム

判定

証(症状・体質)判定を望む方判定の方右矢印 証の判定メニュー画面へ » ※この判定のために、AI(人工知能)のエキスパート・システムを構築しました。Java

 生 薬

古代より、人類は病気治療にハーブを用いてきましたね。

たとえば、6万年前にさかのぼるイラクの墓地では、喘息の治療に使用される漢方薬であり現代の薬品エフェドリンの原材料である麻黄(エフェドラ)の痕跡が発見されていますよ。

中国では、漢方薬による治療は紀元前3,000年ごろに始まったと伝えられています。

皇帝神農は膨大な数の薬草を自ら試してその薬能を明らかにし、古代中国の人々に農耕や酪農の基礎を教えたと言われています。

神農による貴重は漢方薬の教本『神農本草経』には、ハーブ、鉱物、動物を含む365種の漢方薬が記載されています。

今日、これらと同じ漢方薬が少なくとも5,000年間ほぼそのままに引き継がれ、今だに多くの漢方薬処方の基礎となっていますね!。

生 薬 »

 薬膳食材

不規則な生活やストレス、食生活の乱れなどが原因となり、さま、ざまな不調を抱える人が多い現代。こうした不調を感じたときは、対症療法で症状を抑えるだけでなく、食事や労働状況などに原因がないかを見直すことが大切ですね!。

健康は自然と調和した生活によって保たれるとする東洋医学は、日常生活に原因がある不調の改善に非常に効果的です。

こうした不調が病気へと進む前の段階「未病」のうちに、心身の調和を取り戻そう、あるいは現在の健康を維持・増進しようというのが、「養生」の考え方ですよ!。

薬膳食材 »

 中国伝統療法

1.気功・太極拳

気功は、湿邪の多い中国中部において、病邪から身体を守り、気や血をスムーズに巡らせる目的で生まれた「導引」と呼ばれる運動から発達したとされますね!。

気功は大きく、武術などで使用される「硬気功」と、治療や養生などで使用される「軟気功」に分かれます。

軟気功には、「養生気功」と「外気功」があります。養生気功は、静かに瞑想しながら行う「静功」と体操のように体を動かす「動功」があります。

日本でも愛好者の多い「太極拳」は動功の一種で、深し、呼吸をしながら身体をゆった0と動かし、体内の気や血を巡らせますよ!。静功と動功を組み合わせ、相互に行うのが効果的です。

外気功とは、一般に気功治療などで使用されます。気功に熟練した治療者が、患者に気を送ることで病邪を取り除きます。

 中医学の歴史

中医学の起源は、哲学者で鍼治療士だった「伏義」、「神農」、そして「黄帝」という伝説上の3人の皇帝が薬草、漢方薬、治療法を発見したことにさかのぼるといわれています。

しかし多くの伝統治療がそうであるように、正確な起源は時の流れとともに霧の中に包まれ、定かではありません。

中医学の歴史 »

 漢方医療の未来

漢方薬生産金額

 備 考

 病 因

病気のしくみ

病気はどうして起こるのでしょうか?(中医学の病因)

異常が起こす病気のメカニズムは、次の4つに大別されます。

1.陰陽失調

正常な状態での陰陽(positive and negative principles)は、互いに影響しあいながら平衡状態を維持 していることになります。しかし平衡状態が乱れて、どちらかが増長としたり減退すれば病気の引き金となり、これが「陰陽失調」に当たります。
【論治】陰または陽の補充を行う漢方薬を使用します。具体的には八綱分類で対応します。

2.邪正盛衰

邪とは病気を引き起こそうとする「病邪」、正は病邪から体を守 る「正気」のことで、病邪の力が正気を上回って病気になってしまうのが「邪正盛衰」です。たとえば、ウイルスを病邪、身体の抵抗力を正気と考えればいいのです。ただ、結果的に邪が正を打ち 負かして発症するといっても、その過程は病邪・正気自体の強さによる2つのパターンに分けられます。この2つが、東洋医学の診断で重要な「実証か虚証か」という見きわめに直結します。
【論治】病気の直接的な原因となっている「内外の病邪(病因)」を除去する漢方薬を使用します。

3.気血失調

血は気から作られ、その血は気に変化することもあるように、気血は車の両輪のように密接に連動しながら人体の生理を支えています。「気血失調」とは、どちらか一方の乱れがもう一方に深刻な影響を与えて病気が起きることをいいます。
【論治】体内に流通する気・血・水(津液)・精の疎通あるいは補充を行う漢方薬を使用します。

4.臓腑経絡の失調

五臓六腑の活動はそれぞれの臓器の気が行っています。こ の臓器中の気や血の不足から発症するのが臓腑の失調です。また、経絡は気と血の一部の運行経路 ですから、その機能が失調すると気血の流れに異常が起こって病気につながります。
【論治】五臓六腑の機能を調整する漢方薬を使用します。

普通は、これらの4つのメカニズムの働きを1~3種類の漢方製剤で対応できることが多いです。しかしながら、成人病・難病は内・外の病因が複雑化し、五臓六腑の機能失調の状況や、体内を流通する気・血・津液・精の盈虚通滞(量的に過剰か不足か、流通が過剰が停滞かなど)における病理現象が煩雑化しているため、4種類以上の漢方製剤を使用する場合もあります。

張仲景

 張仲景

:150年~219年頃?南陽郡(河南省)の人です。後漢の霊帝時代に活躍しました。医方の祖と人々から尊敬され『傷寒雑病論』を作りました。 生薬を組み合わせて処方し、病態に対応する治療書です。『傷寒論』と『金匱要略』があり、湯液療法の規範となっています。


葉天士

 葉天士

:1667年~1746年 中国江蘇省蘇州の人です。清の時代に活躍しました。衛気営血弁証を弁証綱領とすることを提唱し、温病学の考え方の基礎を作った人です。 弟子や後代の人々の手を経てまとめられた彼の治療技術は、『温熱論』『臨証指南医案』『葉氏医案 存真』『葉氏医案』として、現代に伝えられています。


 治 則

治則とは、2300年以上に渡る臨床の積み重ねの結果、確立された治療手順 の原則です。
治則には2つの原則があります。

1.病を治するには必ず本を求む(治病求本)

病(やまい)には、かならず症状と症状をつくりだす本質とがあります。そこで、 症状をといい、本質をといいます 。「病を治するには必ず本を求む」とは、病気を治すためには、必ず病気の本質となるものを探らなければならない、という意味です。
私達は、ある疾患に対し、八綱弁証、気血津液弁証、臓腑弁証などの弁証方法を用いて、証を求めることを学びました。 たとえば、血虚による便秘を例に取ると、便秘をおこす本質となる血虚証を改善することに重 点を置かなければなりません。血虚証が改善されれば、血のもつ滋潤作用で、腸壁が潤い、便がスムーズに流れ、 便秘はおのずから消失します。
このように病気の本質を突き止めることが「病を治するには必ず本を求む」の本意です。
病気の本質を見きわめた後、それを除去する手順(治則)として以下の5つの手順が用意されています。

(1)扶正

病気が正気の不足で起こる虚証のときは、正気を補う扶正が治則となります。正気とは、体を維持するために不可欠なもので、 具体的には気、血、津液、精および各臓臆、経絡の働きをいいます。気、血、津液、精の不足およびに各臓脇、 経絡の機能低下を総称して正気不足といいます。
治則は正気を補う方法が取られます。補気、補血、生津、益精などがこれに相当します。

(2)祛邪

病気が邪気によっておこる実証のときは、邪気を取りのぞく祛邪が治則となります。邪気とは、六淫の邪、 内生の五邪およびに体内の病理産物である水湿、痰飲、瘀血などをさします。
邪気が病因なので、邪気を取りのぞかなければならないのです。これを祛邪といいます。 散寒、清熱、祛湿、活血などがこれに相当します。

(3)攻補兼施

正気不足と邪気の停滞とが同時におこる状態に用いる治則です。
たとえば脾の運化作用の低下が長びき、同時に津液の運化が損なわれて痰飲が生じている場合には、健脾と 祛痰(扶正と祛邪)を同時におこなわなければなりません。

(4)急な症状は先に治す「急なれば標を治す」

緊急の症状のときには、早急に症状の改善をはからなければなりません。
たとえば脾の不統血による大量の出血では、まず止血をすみやかにおこない(標を治します)、その後、 脾の統血機能を回復させる升補脾気、益気摂血にしたがい治療します(本質を治します)。

(5)表証と裏証が併存するときは表証を先に治す「先表後裏」

表証と裏証が同時に存在する場合は、裏証の存在を考慮しながらも、表証を先に治療します。
日頃から気虚があるものが、風寒の邪で表をおかされた場合は、急いで表にある風寒の邪を取りのぞく 疏散風寒(祛邪)をおこないます。その後、気虚を補う補気(扶正)の治療を取る。ただし、気虚の程 度が甚だしいときには、疏散風寒(祛邪)と同時に補気(扶正)をおこなうこともあります(攻補兼施)。

中国女性

2.地域(region)、時節(season)、人(individual)により治療が異なる

地域性、季節性、個人差を重視し、これに適する治療をおこなうことを大原則とします。

(1)地域性(region)

地域が異なると、温度や湿度などが違い、さらには生活習慣や食生活も異なります。この地域性の違いは、 人体に多大な影響を与えることになります。治療を行う場合は、地域性の違いや、それから考えられる体質の 違いを十分考慮しなければなりません。
島国の日本では、湿度が高い(湿邪に犯されやすい)。一方中国では、大部分が内陸型の気候であるため、 乾燥し、湿度が低いです。さらに日本の食生活では、生もの(寿司など)や冷たいもの(清涼飲用水など)をよく好む傾向があります。そのた めに日本人は一般に脾の運化作用が弱いことが多いです。
治療の場合は、脾の運化作用を活発にさせる配慮が必要です。また近年は、住居の密閉性(マンションなど)が高くなり、 冷暖房設備(エアコンなど)が充実しているため、夏に風寒の邪に犯されたり、冬に燥熱の邪に犯されたりすることもしば しばみられます。
また、日本に於いては、都会の自動車による大気汚染や食物の農薬汚染など環境汚染が甚だしい問題になっています。 この問題についての中医学の対応も非常に重要な課題となります。
そのため同様の「証」に対しても、中国の治療がそのまま、日本で適応するとは限りません。

(2)季節性(season)

日本の四季は、春・夏・秋・冬の区別がはっきりしています。季節の移り変わりに応じて、人体も少なからず変化します。 そこで、季節の変化は、治療にあたり、考慮しなければならないひとつになります。
たとえば、冬と夏とでは、同じ風寒の邪によるカゼでも、少し違い があります。冬は、寒さで汗孔が閉じていることが多いです。そのため風寒の邪 を取りのぞくには汗孔を開き、発汗に力点をおかなければなりません。
一方、夏の場合は、暑さで自然に汗孔が開いている状態にあります。たとえ風寒の邪が侵入しても、 汗孔を軽く閉じる程度です。従って軽度の発汗力をもつ薬物が配合されたもので十分です。 このとき、冬期と同様に強力な発汗力をもつものを用いれば、汗孔が開きすぎ、汗が ダラダラと止まらなくなり、風寒の邪が取り除かれると同時に気や津液が消耗し、 感冒は治癒しましたが気虚や津液不足に陥るはめになってしまいます。

(3)個人差(individual)

人はそれぞれ父母から受け継いだ先天の素因(先天の精)が違い、さらには母体内の環境や栄養状態も異なります。 ましてや、生後から現在にいたるまでの生活環境、仕事の環境、人間関係などはまったくといって いいほど違います。そのため、ひとりひとりの人間が同じ体質をもつことなど有り得ません。
また、ひとりの人間の一生をみても、成長の過程により、体質が変化します。女性の例では、 妊娠出産時の体質の変化は無論として、毎月の排卵、月経のたびごとに微妙に体質が変化します。 以上のことでわかるように、個人差は治療の場合、必ず考慮すべきものです。
区切り

中医学(漢方)は中国(China)で生まれ、発展した体系医学です。その起源(origin)は遠く2千3百年以上も前に遡ります。そして、日本にも古く(5世紀)に中国から朝鮮半島を経て伝わり、日本独自の発展をしました。

自然(nature)との調和(harmony)を求め、自然に学ぶ。自然を活かし、人(human being)を活かす。自然の恵み(mercy)。

五行説

五行:万物(all things)が木(tree)・火(fire)・土(earth)・金(metal)・水(water)の5つの要素で構成され、自然界の現象はこれらの運動や変化によって説明できるとした世界観です。リンク陰陽五行説(positive and negative,five classification theory) »