危険な糖尿病の合併症
気がつかないうちに進行する糖尿病。早期に自覚症状がない糖尿病は発症そのものに気がつかなかったり、健診で発見されて治療を開始しても、治療の成果を自覚できずに治療を挫折して放置してしまう人が多い病気です。

しかし、糖尿病が怖いのは放置していると、確実に進行すること。その結果、取り返しのつかない「合併症」を引き起こしてしまい、悔やむことにもなりかねません。

成人の失明原因の第1位は糖尿病による網膜症であり、腎不全による人工透析を行っている人の3分の1は糖尿病患者であるといわれ、また糖尿病は動脈硬化を促進するので、心筋梗塞や脳梗塞の危険にもさらされることになります。


概 要


糖尿病の合併症とは?

糖尿病で高血糖状態が長く続くと、体中のさまざまな臓器に合併症が起こります。


合併症は「糖尿病性昏睡」というインスリンが極度に不足したときに起こるような急性合併症と、時間をかけてゆっくり進行して行く慢性合併症とがあり、一般的に糖尿病の「合併症」というときは、慢性の方を指します。

慢性糖尿病には「3大合併症」と呼ばれる「糖尿病性網膜症』「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害1があります。

また、糖尿病があることで動脈硬化症が起こりやすくなり、それに起因して狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、白内障、緑内障、脂肪肝、高脂血症などを発症する危険性も高まります。

神経障害

早い時期に自覚症状 糖尿病の3大合併症の中で、最も早い時期に現れるのが「糖尿病性神経障害」です。

網膜症や腎症と同様に高血糖が続くことで、神経が障害されたり、毛細血管の障害によって血流が低下することなどで、手足のしびれや痛み、感覚の麻痩、立ちくらみ、下痢や便秘の繰り返し、味覚が鈍くなる、発汗異常、勃起障害、内臓の不具合など、全身にさまざまな症状をもたらします。

網膜症や腎症が悪化するまで自覚症状がないのに比べ、神経障害は手足のしびれなど、ごく初期の段階から自覚症状があります。

末梢神経の障害

神経は脳が発する命令を伝えたり、逆に脳へ情報を送ったりしています。

神経を大きく分けると、脳と脊髄から構成されている太い「中枢神経」と、そこから枝分かれして体の隅々にまではりめぐらされている細い「末梢神経」に分けられ、糖尿病で阻害されるのは、「末梢神経」の方です。

「末梢神経」には痛い、冷たいなどを感じる「感覚神経」、手足を動かす「運動神経」、内臓の働きや発汗、体温などを無意識のうちに調節する「自律神経」があり、それらに障害が起きることでからだのコントロールが乱れ、何も触れていないのに痛みを感じたり、逆に痛みを感じなくなったり、部の筋肉が動かない、心拍のリズムに変動がなくなったり、胃腸の働きが悪くなるなどが起きるのです。

感覚・運動神経の障害

高血糖が続くと、まず「感覚神経」に症状が現れます。手や足の先から左右対称に出て来るのが特徴で、手や足の指先がじんじんしたり、しびれや痛みを感じたり虫が這うような知覚の異常を感じたりします。それらが次第に足先からひざ、手先からひじへと広がって行きます。進行すると、「運動神経」も阻害され、筋肉に力が入りにくくなったり、目を動かす神経に麻痩が起こることで物が=重に見えたりするようになります。

神経そのものが麻痩すると痛い、熱いという感覚が失われて、けがややけどに気がつかずに悪化させ、潰瘍や壊疽(エソ)へと発展させてしまいます。特に足は壊疽になりやすく、場合によっては切断を余儀なくされることもあります。

自律神経の障害

「自律神経」は全ての内臓や内分泌腺、血管などを自分の意志とは関係なく生命を維持していくための働きをしています。つまり、呼吸や循環、代謝、体温調節、消化、分泌、生殖など、生きて行くために必要な機能を調節しているので、そこに障害が起きると、自律神経が関係しているあらゆる範囲に症状があらわれる可能性があるのです。

胃のもたれ(胃無力症)、下痢や便秘、起立性低血圧による立ちくらみ、心臓の動きが突然おかしくなる不整脈、発汗異常、尿意を感じず排尿できない無緊張膀胱のほか、低血糖が起こっても動悸や発汗などの警告症状が起こらずに重症化したり、心筋梗塞が起こっても痛みに気付かずに(無痛性心筋梗塞)重篤化することもあります。

「自律神経」は全ての内臓や内分泌腺、血管などを自分の意志とは関係なく生命を維持していくための働きをしています。つまり、呼吸や循環、代謝、体温調節、消化、分泌、生殖など、生きて行くために必要な機能を調節しているので、そこに障害が起きると、自律神経が関係しているあらゆる範囲に症状があらわれる可能性があるのです。

胃のもたれ(胃無力症)、下痢や便秘、起立性低血圧による立ちくらみ、心臓の動きが突然おかしくなる不整脈、発汗異常、尿意を感じず排尿できない無緊張膀胱のほか、低血糖が起こっても動悸や発汗などの警告症状が起こらずに重症化したり、心筋梗塞が起こっても痛みに気付かずに(無痛性心筋梗塞)重篤化することもあります。

診断後の注意点

糖尿病性神経障害と診断されたら、血糖値をこまめに測定してコントロールの改善に努めます。

早めの血糖コントロールは初期の症状を改善して、進行を防ぐことも可能です。

また・神経障害ではさまざまな症状が起こり、症状に応じて、それぞれの分野の専門医のところで治療を受けることも必要になりますので、複数の医療機関を受診するときは、自分が糖尿病患者であること、服薬している薬をきちんと告げるなど薬の重複や同時に服用してはいけない薬の処方を避けるようにします。

神経障害が進行すると、痛みを感じなくなってしまい、治ったものと勘違いすることもあり、症状は同じであっても糖尿病性神経障害ではなく、別の病気が原因であることもありますので、きちんとした検査を受けるようにするなど、注意が必要です。


治則説明

動脈硬化


糖尿病で危険が倍増

「動脈硬化」は動脈の内側の壁に脂肪やコレステ□rルがたまり、血管が狭く、もろくなり、その結果、血管が詰まって、脳梗塞や心筋梗塞という、突然、命を奪いかねない重篤な病気の引き金にもなりかねません。


「動脈硬化」はいわば老化現象のひとつと言え、だれにでも起こりうるもので、糖尿病だけに起こる合併症ではありません。

しかし、糖尿病を発症していると、動脈硬化を促進してしまうので、糖尿病でない人よりも2、3倍も脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす危険が高まります。

脳梗塞になった人の約半数、心筋梗塞になった人の約3分の1に糖尿病がみられるともいわれます。

糖尿病患者における特徴

血糖値が少し高いものの糖尿病と診断されるほどではない「糖尿病予備群」の段階から、動脈硬化は進行するとして注目されています。

進行が速いために、狭心症から心筋梗塞、心不全へと進みやすいといった危険や、糖尿病性神経障害を合併している場合は、痛みを感じないために発見が遅れてしまうなどもありますので、心臓の検査を行って注意をすることが必要です。


脳梗塞の場合は発作の前にめまいや、ろれつが回らない、片方の目だけが見えにくい、体の片側だけがしびれるなどの兆候が見られますので、発作のサインに気がついたら、すぐに病院に行くようにしましょう。

足の壊疽(エソ)


心臓や脳以外の場所に起こる動脈硬化には「下肢閉塞性動脈硬化症」があります。

悪化すると足の先が壊疽(エソ)を起こすことがあり、神経障害を合併するとさらに発症しやすくなります。治療が遅れると、皮膚や皮下組織の細胞が腐り、足の切断という事態にまでなりかねません。糖尿病のコントロールが悪いと、靴ずれややけど、水虫などのちょっとした傷や感染症が悪化して潰瘍や壊疽になりやすいとされています。

動脈硬化で血流が悪くなると、小さな傷でも膿みやすくなり、潰瘍や壊疽へと悪化します。

特に神経障害を合併した壊疽は感覚神経が麻癒して、痛みを感じないことから、足の小さな傷を悪化させてしまうことが原因でおこりやすく、患部は腫れてくずれたようになり、湿って悪臭もします。

その他の合併症

白内障と緑内障の早期発症


白内障は加齢とともに目のレンズに当たる水晶体が白く濁り、見えにくくなる病気ですが、糖尿病があると、発症が早くなる傾向があります。 「糖尿病性白内障」は網膜に近いほうから濁りはじめるのが特徴で、明るいところほどものが見えにくいといった症状があります。白内障は手術で人工のレンズを入れることで視力が回復しますが、糖尿病性の場合は「後発性白内障」が起きたり、網膜症が発症するなど、術後も注意が必要です。 緑内障は視神経の障害によって視力が落ち、視野が狭くなって、治療をしないと失明にまで陥ることもある病気ですが、糖尿病特有の「血管新生緑内障」は糖尿病性網膜症で生じた新生血管が房水の排出口である隅角をふさいで眼圧が上昇することで起きます。 糖尿病性の緑内障は眼圧を下げる点眼剤は効果があまりないため、レーザー治療が中心となっています。

抵抗カ低下による感染症

糖尿病を発症すると、体の抵抗力が弱くなるため、ウイルスや細菌に感染しやすくなり、肺炎や膀胱炎、皮膚炎など、からだの全身に感染症を起こしやすくなり、発症すると悪化させやすく、健康な人には無害な菌によっても感染症が起きたりします。さらに、感染症にかかると、インスリンの働きを阻止するホルモンが分泌されることによって、高血糖状態がさらに高まって糖尿病が悪化し、感染症も悪化するという悪循環が生まれます。

感染症の予防には血糖コントロールをきちんと行い、抵抗力を高めることが大切です。ストレスをためたり、暴飲暴食をせずに睡眠をとり、規則正しい生活をすることが大切です。





備 考