腐膩の事例
膩苔と腐苔が一緒にみられるものは「腐膩苔」と呼びます。
腐苔(ふたい)
膩苔(じたい)
腐苔
舌面におから状(脱落の糸状乳頭細菌食へもの残留物なと)のものが厚く積もり、粒が粗大でこそぐと取れやすいもの。「無根苔」でもみられる。
【弁証論治】(syndrome differentiation and therapy determination)
●食積疾濁化熱・内麗
腐苔は熱邪と疾濁や食積が挾雑して舌へ持ち上がって形成されるものである。食積
化熱・疾濁化熱、あるいは内睡の陽熱有余刈のときによく現れる。治療原則は清熱性
邪である。
腐苔で暗くて汚いものはr腐垢苔」と呼ぶ。腐苔に膿のような粘液で覆われるものは
r膿腐苔」と呼び、内擁によくみられるものである。
また、舌に白いカビのような苔があり、こそぐと取れるがすぐに生じてくるものは、
軌'ふたい二うび†いほ一
「竃腐苔」「一廉」と呼ぶ。これは正気が衰敗*2し、糠濁の邪気が上乗して現れるもので
ある。カビ`口腔カンジダ症などのときによくみられる。
一般的には、賦苔が腐苔に変化するのは邪盛正衰の兆候を示しており、腐苔がなくな
り薄い苔が生えてくるものは正勝邪退*3の兆候を示すものである。
且武腐苔は各種の急・慢性炎症疾患、特に胃腸炎・肝炎・胆嚢炎・気管支炎、また心疾
患・脳血管障害などによくみられる。
*1陽熱有余:陽熱の邪気が多く存在する状態。
*2衰敗:衰えること。
*3正勝邪退:邪正闘争の過程で、正気が勝って邪気が退くこと。
膩苔
舌面にべったりとして張り付き、細かく緻密で、こそいでも取れないものです。
「有根苔」でもみられます。
【弁証論治】(syndrome differentiation and therapy determination)
●湿邪・水飲・痰濁・食積
膩苔は湿濁の邪気が内蘊*1 して、胃気などの陽気を阻渇*2 することによるものです。
さらに苔色や潤いの状態により寒熱を見分けます。白膩苔・白滑膩苔は寒湿・寒痰*3 ・水飲*4 を示します。
治療原則は散寒利湿・芳香化濁*5 ・温中燥湿*6 です。
黄膩苔、また少津が現れれば湿熱・痰熱・食積化熱を示します。
治療原則は清熱化湿・清熱化痰です。
暗くて汚い膩苔を「垢膩苔」と呼びます。膩苔に汚い粘液が覆われるものを「粘膩苔」と呼びます。これは重度の湿濁の内蘊*1 を示します。
*1 内蘊:内にこもっている。
*2 阻渇:阻む、抑制する。
*3 寒疾:寒邪と疾が合わさったもの。
*4 水飲:水分の代謝失調によって水が留まっているために生じた病理産物。粘穂なものを「疾」、清稀なものを「飲」という。
*5 芳香化濁:芳香性の薬物を用いて湿濁を取り除くこと。
*6 温中燥湿:中焦を温めて、湿邪を取り除くこと。